黄斑変性症の症例: 非常に見つけにくい新生血管

2020年3月の症例を紹介します。
40代男性、I様。東京都渋谷区在住。
萎縮型の黄斑変性症です。
2011年頃に脈絡膜新生血管がわかり、何度か出血を繰り返してその都度眼内注射で治療してきました。
2019年10月に最後の出血があり、その後は落ち着いているとのこと。

2020年3月に初めて針治療させていただき、治療後1時間経ってからすごく見えやすくなったそうです。歪みが取れていくような感じで、人混みも歩きやすく、気持ちが随分明るくなったとお話されていました。

何度か針治療を続けたところ、ある日、急に見え方が悪くなり、モヤがかかったような感じで視界が暗く、色が赤茶けた感じに見えたそうです。
数日経つと一時良くなりましたが、それからまた2〜3日すると歪みがひどくなり、心配になったとご相談いただきました。
もちろん、眼科医師にも相談しましたが「異状はない」と言われたそうです。

針治療をしたからといって、短期間のうちに良くなったり悪くなったりを繰り返すのは普通のことではありません。
良くない兆候を感じましたので、眼科以外の病気も含めて、精密検査を受けるように強くおすすめいたしました。
その後、しばらくお見えにならなかったので、どうしたことかと心配しておりましたが、9月初旬久しぶりにお電話くださいました。

3月に眼科に行き、「どこも悪くない」と言う先生を説得して、20分の1まで断層を切って細かくCTスキャンしたところ、非常に小さく見つけにくい新生血管が見つかったそうです。網膜も普通の人よりだいぶ薄くなっていたために見つけにくかったとのこと。
眼内注射をしたら落ち着き、4月以降は月1回医師の診察を受けて、何もせず経過を観察していました。
4〜6月は異状ありませんでしたが、7月に同じ箇所にまた出血が見つかり、7月、8月と、月1回注射をして、現在は落ち着いているそうです。
見え方としては歪みはなくなり、暗さも取れてきましたが、かすみがかかっていて、視界がぼやけるのがつらいとのこと。


3,7,8月と眼内注射を受けた後はしばらく針治療はお休みし、少し間を置いてから治療を再開しました。
このような場合は針治療をお休みし、注射後、間を置いてから針治療を受ける方がよろしいと思います。

現在のI様は、出血も落ち着き、網膜の凸凹も解消して平らになっていますが、度々の出血により網膜が引っ張られて「網膜剥離」を起こした後の眼に近い状態となっています。
見え方は、かすみ、ぼやけが続いておりますので、こうした症状の改善をめざして針治療を受けておられます。

もし、あのとき、医師の言うままを信じて出血が起きていることに気づかず、何か月も放置していたら……。もしかすると、網膜にさらなるダメージを受けてしまったかもしれません。

このたび、同じような症状でお困りの方の参考になればと、症例報告の許可をいただきました。
I様は「おかしいと思ったら、医師に遠慮せず、自己主張して調べてもらってください。手遅れにならないうちにぜひ検査を!」と力強くおっしゃっていました。

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