危険な飛蚊症の症例

『眼科ケア 2005年冬季増刊』メディカ出版、2006年、p203より

症例

2015年5月、私がセタガヤ治療室で経験した症例を紹介します。

5月17日初診、50代男性、Kさん。

2015年5月12日の朝9時、突然左の視界に線状の影が2つ、点状の影が2つほど現れました。
5月13日、16日に大学病院を受診。ただの飛蚊症(生理的な飛蚊症)と言われました。
17日、われわれの治療室で話を聞きますと「そんなに突然に変化が起こるのは、おかしいですね」ということで提携する眼科クリニックを紹介しました。(この日は、ひとまず生理的飛蚊症と仮定して針治療を行いました。)
18日に提携クリニックを受診。
5月23日、2回目の針治療。
5月26日、再び提携クリニックを受診。
「網膜裂孔(もうまくれっこう)」と診断され、レーザー治療を受けました。

まとめますと、最初は生理的な飛蚊症のうち❷のパターンと診断され、大学病院でも「問題ない」と言われていたものが、発症から2週間後に「網膜に穴が空いた」と診断された症例です。
網膜裂孔は放置すると、そこから穴が広がってしまうことがあり、大変危険です。
Kさんの場合は、何度もクリニックに通ったことによって、ダメージが少ないうちに適切な治療を受けることができました。

「後医は名医」……と言っては先生に失礼ですが、後にならなければはっきりとした診断がつかないこともあります。
われわれとしても、再三の眼科受診をお勧めして良かったです。

飛蚊症とは

鍼灸の適応について

網膜裂孔、網膜剥離の場合は、すみやかに眼科を受診する必要があります。
こうした病気ではなく、単なる生理的飛蚊症の場合は、鍼灸の適応です。
記事の冒頭で説明した❶の場合、血行をよくし、硝子体の変化を促すことによって、症状を改善することができると考えます。❷の場合は硝子体と網膜の癒着さえなければ、時間の経過とともに症状は軽くなるでしょう。
飛蚊症ができたら、まずは医師に相談してください。

飛蚊症は、眼球の内部を満たすゼリー状の物質(硝子体)が変化して起きる現象です。
視界に糸くずや虫のような黒いものが見えます。

❶硝子体の自然変化により、内部にシワが寄って影が見える。
❷硝子体が加齢とともにしぼんで、網膜から離れていく。このときに一時影が見えるが、多くの場合、網膜から遠ざかるにつれて影は薄くなり、飛蚊症の症状は軽くなる。

硝子体が網膜から離れていく図/『眼科ケア 2005年冬季増刊』メディカ出版、2006年、p204より
硝子体が網膜から離れていく図/『眼科ケア 2005年冬季増刊』メディカ出版、2006年、p204より

この2種類を生理的飛蚊症と呼びます。
また、❷が起こったときに硝子体と網膜が癒着している人は、硝子体の動きにつれ網膜が引っぱられ、網膜が破れて裂け目ができることがあります。これを網膜裂孔(もうまくれっこう)と言い、網膜剥離(もうまくはくり)や視野の欠損につながる重大な危険があります。

「網膜裂孔」の図解/『眼科ケア 2005年冬季増刊』メディカ出版、2006年、p205より
「網膜裂孔」の図解/『眼科ケア 2005年冬季増刊』メディカ出版、2006年、p205より

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